20歳になったと同時に免許をとりにいった。デビューして2年目は想像以上、目まぐるしい毎日であったが、朝早くにおきて教習所に通う。オートマ限定にしぼってなんとか免許を取得した。わたしのまわりでは18歳になったらすぐに免許をとるのが普通であったので、20歳でようやくそれを手にしたわたしは遅いくらいだった。

 免許をもらったその日、嬉しくて、首都高速道路を錦糸町から三軒茶屋まであてもなく走った。最高の気分だった。この日になくてはならなかったのがゴルフのクラシックラインだ。
 左ハンドル、屋根がひらくカブリオに憧れた。丸めのライトにタイヤも可愛かった。黒、ボルドー、ネイビー、グリーンの4色が都内を走っているのをよく見かけた。私はグリーンが好きだったのでグリーンにしたが、どの色も本当に魅力的だった。

 音楽をかければ外にも聴こえてしまうし、蒸し暑い日にかぎってエアコンが壊れる。汗だくになりながら運転したのは一度や二度ではない。ハンドルは重い。ブレーキもベタ踏みしないと、というぐらいききにくい。最近、車検のための移動で走らせたが、運転するのがこんなに大変な車をよく乗りこなしていたなと感心した。

 しかし、そう、互いに力を込めて走る、協力し合って走るかんじが好きだったのだ。
 どこかが壊れれば新しい部品を世界中から探さなくてはならない。それなりにお金もかかる。長いあいだじっとガレージに居座るその姿を見るたびに愛しい気持ちになり、また乗りたいなとおもってきた。
 どんなに素敵な車が登場しても気持ちが離れることなく大切にしてきたゴルフ、カブリオ、クラシックライン。本当に今までありがとう。あなたと一緒に走った思い出はずっとそのまま。記憶と共に明日へと。