(つづき)

2024.7.20

 大阪で用事をすませた私たちはひとしきり楽しんだ。働きはじめてから何度と訪れた場所でも私用で行くのはまた全然違うものです。仕事の前日入りで時間があったとしてもどことなく気が引き締まっていて、伸び伸びとまではいかなかった。今あらためていろいろな土地に行ってみるのはとても良い時間となるかもしれないと思ったりして。満喫できた。

 ホテルで一泊、朝早く起きてはビュッフェなどにも行ってみたり。鮮やかな野菜数種類とあたたかい紅茶をいただく。帰りも混んでいるんだろうと思い、明るいうちに東京へ。新大阪の駅に着くもやはり想像以上にごった返していた。チケットを購入するのにかつて見たこともないような長蛇の列。アトラクション待ちかのようにベルトパーテションがひかれている。「いざ」という気持ちでその列に並ぶこと40分くらいだろうか、ようやくチケット販売機にたどり着き座席を購入できた。行きと同様に通路をはさんでの2席となった。こちらは想定内。席を買えただけでもラッキーである。

 新幹線がホームに到着、ドアが開き並んでいた人々はゆっくりと乗車し席まで進む。自分の席に着き、チケットと座席を何度か確認したうえで荷物を棚にあげ席についた。ここまでいかにスムーズに行えるか、毎回自分へのミッションとして行動できるよう心がけているので席につけたときの安心感たるやない。

 しばらくして、通路にスラっとした背の高い女性がやってきた。スーツケースに手荷物や紙袋と大変そうであるのに、いたって呼吸は落ち着いていらして余裕がある。髪の毛にまでお手入れが行き届いておられ、姿勢もいい。見習いたいものである。窓側の方が手にしたチケットと座席番号を見合わせ確認しているのかなと、入りやすいように立ちあがろうとするとその女性は「あ、いえ、大丈夫です」と言ってあたりを見渡し、どこか別のところへ行ってしまわれた。昨日のことがすぐさま蘇る。いやいやまさか、あんな夢のような出来事が二度あるわけがない。と思いながらも結局となりの窓側席には誰も乗ってくることがなかった。

 世の中には優しい人たちがいる。「どうぞ」と譲れる気持ちは繋げたくなる。私もいただいた優しさを誰かに渡していこう。

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