fumi
情景を燻らす散文
25-05-07
ソアリン、何度乗っても感動する。
「ディズニーシーでお薦めのアトラクションは」という会話をいつだったか知人としたことがあった。その人は迷わず「ソアリン」と言っていた。その頃わたしはまだソアリンに乗ったことがなかったので、ディズニーシーでいつも長蛇の列をなしているあれか…「そんなにいいの?」と聞くと「いやもう、最高だからとにかく乗って欲しい、絶対好きだと思う」と言われたものだから、よし次にディズニーシーに行ったら必ず乗ろうと心に決めた。
並んだ時間などはすっ飛ばして、まずは感想から書かせてほしい。いやあ、驚いた。こんなに凄いことになっているのか昨今のアトラクション。目で見るだけではなく嗅覚にまでも刺激をくれるとは、まったく思いもよらなかった。あれはいったいどうやっているのだろう。どうしてあの瞬間にフワッと、どこからやってきて、どうやって一瞬にして消すこともできるのだ。感動も感動、降り立ったその足でもう一回乗りたいと心底思ってしまった。凄まじきソアリン。
その日からディズニーシーへ遊びに行けば必ずソアリンを体験させてもらうようになったわけだが。そんなある日、いつものようにソアリンを体験すべく並び、間もなくアトラクションに乗るところまできたとき、わたしの前にはおじいちゃんおばあちゃんとお孫さんの三人家族がいた。おじいちゃんおばあちゃんは初めて乗るとのことでいったいどんな乗りものなのかとお孫さんに熱心に聞いている。聞かれたお孫さんはというと「まぁ、面白いから楽しんで」と言うだけで、楽しみにしてほしいといった様子。おばあちゃんはドキドキしながら席にまで案内されると、わたしとお隣同士になった。ベルトの着用に戸惑っていたので差し出がましくもお手伝いをすると、とても優しい笑顔で「あ、どうもありがとうございます」とお礼をいってくださった。この雰囲気でお人柄がわかるものだ。話し方は本当に人となりを表してくれる。とても優しいあたたかいトーンだった。どんなものなのかとずっと緊張しておられたので、つい「とっても最高な世界ですよ」と声をかけた。するとおばあちゃんは「孫に誘われてわからずに着いてきたのだけれど。そう、じゃあ、楽しみだわね」とすこし照れながら答えてくれた。わたしはまったく関係のない立場であるのに、自分が連れてきたかのようになんだか嬉しくなってしまった。アトラクションがはじまると何度乗っても素晴らしい絶景に心は高鳴る。そう思っているとおばあちゃんの声が「まぁ、凄い!わぁー」と楽しそうにしていらっしゃるのが伺えて、おばあちゃんの感動とそのめくるめく風景とが相まって涙が出てきてしまった。きっと、そんなに旅に出かけることも多くないのかもしれない、夢のような気持ちなのではないだろうか、それを可愛い可愛いお孫さんが連れてきてくれたわけで、なんだか、その喜ばれている姿に涙がとまらなかった。素晴らしい旅をしながらにこんな幸せをお裾分けしていただけて、またしても凄まじきソアリン。胸が熱くなったのだった。
わたしにはもう祖母や祖父はいない。連れてきてあげることはできないのだが、せめて親を連れてきてあげようかなと思い今度誘ってみようと気持ち晴れやかに出口まで歩いていた。すると後ろから女子高生たち。「でもさ、東京がいちばん綺麗じゃない?」「やっぱり私も思ったー!」「東京がよかったよねー!」と十人十色。
まだ乗ったことのない方はぜひ。
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