秋の夜長

2024.11.24

 金木犀の香りがいいですね。今住んでいる家は金木犀の木で覆われているため、この季節になると家中が香りに包まれます。洗濯物を干せばその香りをまとって乾くので、たとえばわたしは寝るときに枕にかならずタオルを巻くのですが、ほのかに金木犀を感じながら眠りにつくことができるのです。なんという至福。そんな自然の心地に癒されて眠りにつけるのは、この季節でしかない。春や秋という期間がどんどん短くなってゆくゆくには「二季」になんてことも言われていますから、遠い未来を想像すればするほど四季折々の美しさはなくならないでいてほしいと愛おしく思います。

 先日、秋を味わうべく、毎年伺う修善寺のお宿に行って参りました。その夜にNHKの再放送だったか、「生誕120年・没後60年 小津安二郎は生きている」を見ることができました。眠気まなこで見始めたもののあまりに面白くて気づけば食い入るように見入っておりました。そもそもわたしは日本映画にあまり詳しくないのですが、小津安二郎監督の作品はずっと見たいと思っており、というのも数年前に着物に興味を持ち、自分がどのような類の着物が好きなのかを調べていったところ、木綿をさらっと着られるような、それでいて昔の織物が好きなことがわかり、たどりついた着物屋さんが1986年創業の「灯屋2」でした。そちらでは本当にいろんなことを教わり、いつもどうぞどうぞと素敵な着物をたくさん見せていただいたのでした。その中でも浦野理一さんの着物が好きで、そこから小津安二郎監督の映画に繋がるわけですが、見たいと思いながら幾日もすぎてしまって。修善寺でみた特集、浦野理一さんの着物と、いろんなことが重なりいよいよ東京に戻って映画を見たのですが、虜に。特集をみていたこともあってとても興味深く作品を感じることができたのでした。役者さん方々が小気味よく「こんちは」「さいなら」と挨拶をかわすシーン、「よろしくどうぞ」という言葉もよく父が言っていた口癖と思っていましたがこの時代からきたものだったのだなと納得できたり。お洋服、お着物、美術、画角、どれも粋でいらっしゃる。格好いいなとぞくぞく致しました。

 秋の夜長をうんと楽しみたいと思います。

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